たいりょうのちょっと一息

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『世界の終わり、あるいは始まり』(☆4.5) 著者:歌野晶午

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東京近郊で発生した小学生誘拐事件。父親の勤務先に身代金要求を告げるメールが届けられた。不可解なことに、要求金額はわずか200万円でしかなかった。そんな中、事件が起こった町内に住む富樫修は、ある疑惑に取り憑かれる。小学校6年生の息子・雄介が事件に何らかの関わりを持っているのではないかと。そのとき、父のとった行動は…。既存のミステリを超越した、崩壊と再生を描く、衝撃の問題作。 


Amazon紹介より

 

今まで読んだ歌野さんの作品の中では、1番好きな作品かな~。
小学生の息子が、小学生連続誘拐殺人事件の犯人なのではないか、そんな疑惑を抱いてしまった父親の苦悩が炸裂してるというか。
部屋から明らかに犯行に使われたと思われる物品は登場するし、調べれば調べる程謎が深まっていきます。
さらには旅行で不在の自宅に警察が訪れて・・・

ここまで読んで、父親が息子の無罪を証明していく作品、もしくは子供が犯人だったとしていかにその贖罪をしていくべきなのかを問う、みたな作品なのかなと思ってたんですけど・・・

感想は非常に書くの難しい作品だと思いますね、これ。何を書いてもネタバレしそうな気がして。
ということで、以下はおもいっきりネタバレを含んでいるのでお気をつけてください。

 

 

 

物語の中盤以降は父親の想像の世界が展開されます。
事件に関して、以下に息子と関わっていくか・・・いろいろなパターンが父親の頭の中で構築されていき、そしてすべてが悲劇的な結末に。
さらには父親が自分自身の人間としてのあり方を自問自答していくさまが、しつこいぐらいに丁寧に描かれて読者もついついどうすれば事件にきちんと幕が降ろされるか考えちゃいます。
この難問にいかに歌野さんが解決編を提示してくれるのか・・・と思ったら、結局父親の最終的な決断が描かれる事はありませんでした。いわゆる「リドル・ストーリー」形式の作品になってました。

いやあ、冒険するなあと正直思いました。こんな難問の回答を読者に押し付けるなんてと・・・。
でも1本の小説として考えた場合、この方法しかないよなと思います。下手に書くとなんでやねん!!と思われてしまう構造を、これでもかと緻密に描くことによって、父親の苦悩に読者を同調させてるという意味ですごく評価できると思います。

ラストの父親と息子のコミュニケーションが果たしてどんな未来をしめすのかわかりません。
わかりませんが、何か心の中に深い印象を残します。
厳密には本格ミステリといえないと思いますが、この作品を書き上げた心意気には賛辞を送りたいと思います。

(2006.4.13 ブログ再録)