『地底獣国(ロスト・ワールド)の殺人』(☆2.8) 著者:芦辺拓

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一九三〇年代。創世記の伝説を探るためアララト山を目指した「ノアの方舟探検隊」の飛行船。奇人学者や美人秘書、新聞記者ら一行を待ち受けていたのは絶滅したはずの恐竜と謎の部族、そしてスパイに連続殺人。冒険に満ちた古の怪異を、博覧強記の俊英が精緻な論理で解き明かす奇想天外な傑作本格ミステリ。 


Amazon紹介より


相変わらず相性の微妙に悪い芦部さん、この作品ではなんと恐竜達が出て来ます。
今回森江春策はある老人から持ち込まれた話を聞き、事件を推理するといったいわゆる“安楽椅子探偵”物の変形ですかね。
冒頭から戦前の日本の新聞社が、ノアの箱舟を発見するという企画を立てたことから端を発して、トルコのアララト山を目指した探検チームが、箱舟どころか恐竜や謎の部族が跳躍跋扈する謎の世界に迷い込むという、いわゆる冒険SFチックなノリで始まります。

今まで読んだ芦辺さんの作品の中でも、この冒険譚の部分が結構筆が載ってる方というか読んでて結構面白いです。
『怪人対名探偵』でもそんな感じがしたんですけど、過去の作家や作品にオマージュを捧げてるような部分、『怪人~』では乱歩であり今回は久生十蘭の『地底獣国』ですけど、この辺は結構面白いんですよね。

でも、そこに芦辺さんのエッセンスが入った途端ぐっと地味になるというかなんというか、勢いがなくなっちゃうんですよね。
今回も正直、後半地底獣国の謎や途中で起きた殺人事件が解明される部分になると、どこか腑に落ちない気がするんですよね~。
トリックそのものも結構ラフというか、冒頭で起きる死体消失の謎なんかはイマイチぴんとこないっす。

なにより、老人が春策に過去の出来事を話す理由がとってつけてるというか、なによりこの人いっつもこんな資料持ち歩いてるの?というか、なぜこんなに資料を持ってるんだという疑問が・・・。

試みとしては面白いと思うんですけど、プロットから小説に昇華させる時にもう少し工夫して欲しいな~。読んでて面白い部分もあったし、決して無理な注文ではないかと思うのですが・・・。

(2006.4.13 ブログ再録)