『夢遊病者の死』・『百面相役者』・『屋根裏の散歩者』 著者:江戸川乱歩

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夢遊病者の死』
初期の乱歩作品には、夢遊病をモチーフにした作品が多いですが、これもその一つ。というかタイトルがずばりそのままですが。 主人公が、夢遊病状態の時に発生した事件に対して恐怖を抱くという設定は、「二廃人」と似てますが、後味の悪さというか乱歩のイメージに近いのはむしろこちらかも(作品の完成度ではむこうに分があると思いますが)。 短編映画の原作にするとおもしろそうな題材のような気がしますね。

 

『百面相役者』
これは、ノリとしては落語に近い作品ですね。 まるで別人のように表情を変えてしまう役者と、各地で発生する死体の首持ち去り事件が、うまい具合(というか作者の意図は見え見えなんですけど)に絡んできてワクワクしますよ。 で、ここでもお約束(?)のどんでん返し・・・。 これがまたすっきりとしないというか、居心地が悪いというか、結局効果的じゃなかったのかなあ。 ところでこの役者がのちの20面相だったりして・・・。

 

『屋根裏の散歩者』
本格と幻想のバランスという意味では、もしかしたらこの作品が一番いいのかもしれません。 乱歩的登場人物の典型ともいえる郷田三郎の行う屋根裏の徘徊という行為そのものの魅力的な描き方なんかは、乱歩の願望詰まりまくりじゃないですかね。 殺人にいたる契機、荒唐無稽ながらもユニークな殺人方法、そして明智の純探偵的な調査と推理による解決。 いろいろな部分で乱歩の魅力を詰め込んだ作品だと思います。 余談ですが、三上博史が郷田を演じた同名映画もなかなかの出来だったので興味のある方はぜひご覧ください。

(2006.2.21 ブログ再録)