『日記帳』・『算盤が恋を語る話』・『幽霊』 著者:江戸川乱歩

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『日記帳』
 これはもうなんというか。本格小説というよりは暗号つき恋愛小説? とにかくまあ、ここに登場する男女の恋心の伝え方がまた奥ゆかしいというか、まわりくどいというか・・・。 当時の流行といった背景はあるものの、いくらなんでも伝わらないよと思いますね。 ちょっと今の時代の人からすると理解できない感覚です。

 

『算盤が恋を語る話』
 これもまたちょっとユーモア風味の漂う暗号つき恋物語。 算盤の数字が示す暗号は、それまでの乱歩の暗号の傾向、そして現代の人ならまず大体真相には到達できるでしょう。 時代を感じさせるといえば感じさせますが、ラストのなんともいえない物悲しさは「赤い部屋」の後味にも通じる、ある種乱歩の心理が表れてるような気がして、僕は好きですね。

 

『幽霊』(ネタバレ有り)
 「新青年」に連続掲載された短編の中では、乱歩自身の評価がもっとも低い作品ですね。 ただ前半の雰囲気は結構あります。いたるところに現れる死者の幽霊、追い詰められる主人公。このあたりは乱歩の通俗小説に通じるものがあると思いますが、真相じたいは結構腰砕け。でもそこがまた乱歩らしいといえば乱歩らしいかも。 犯人の、そこまでするかという執念には、頭が下がるというか、動機からすると二十面相なみにやりすぎでしょ(笑)。