『夜のピクニック』(☆3.5) 恩田陸

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夜を徹して八十キロを歩き通すという、高校生活最後の一大イベント「歩行祭」。生徒たちは、親しい友人とよもやま話をしたり、想い人への気持ちを打ち明け合ったりして一夜を過ごす。そんななか、貴子は一つの賭けを胸に秘めていた。三年間わだかまった想いを清算するために―。今まで誰にも話したことのない、とある秘密。折しも、行事の直前にはアメリカへ転校したかつてのクラスメイトから、奇妙な葉書が舞い込んでいた。去来する思い出、予期せぬ闖入者、積み重なる疲労。気ばかり焦り、何もできないままゴールは迫る―。


Amazon紹介より

不思議な味わいの作品ですね、これは。ちょっと「六番目の小夜子」を彷彿させるエピソードなんかあったりしつつも、高校3年生のある日常をうまく切り取ってます。

読み終わって泣くわけでもなく、すごい小説だとも思わなかったんですけど、なんだか、ああ高校生活ってこんなんだよね、っと思っちゃいました。
僕自身は中学高校と男子校という不幸な(?)青春時代をすごしたのでの、この作品に登場するような恋愛関係の経験はあまり無かったんですが、それでもなんだか納得できるというか、懐かしくい思えるんだから不思議なものです。

親しい友人だからこそ言えない秘密、それがばれちゃったときの気まずさ。何に向かってるのか自分でもよくわからない怒りや悲しさといった感情。恋してる・付き合ってるという行為そのものに憧れる姿。うーん、どれもこれも身に覚えがあるぞこれは、と自分を重ねてよんじゃいますね。

それまで大きな秘密、大きな傷だとおもってたものがちょっとしたことでまるで何も無かったかのように開放されちゃうのもこの年代特有の心の動きなのかな。

なんだかわからないけど、ちょっといいお話。
そんな小説なんだと思います。

(2006.2.21 ブログ再録)