『QED 式の密室』(☆3.5) 著者: 高田崇史

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密室で、遺体となって見つかった「陰陽師の末裔」。"式神"を信じる孫の弓削和哉は他殺説を唱えるが…。果たして、崇の推理は事件を謎解くばかりか、時空を超えて"安倍晴明伝説"の闇を照らし、"式神"の真を射貫き、さらには"鬼の起源"までをも炙り出す。これぞ、紛うことなきQED。 


Amazon紹介より


 現代の事件と、日本の歴史の闇に潜む真実に光を当てる「QEDシリーズ」の第5弾。最新刊まで含めても、おそらくもっとも短い作品です。

 このシリーズはマニアックといっていいほどの歴史に関する薀蓄が売りの一つではあると思いますが、時としてあまりに詳細な内容に読んでて辛くなるというか、しかも現在の事件と有機的に結びつかないという事が多々ある欠点を感じてます。

 そういう意味ではこの作品が一番バランスがいいと思います。
 今回のテーマは陰陽師の末裔といわれる弓削家で過去に起こった不可解な密室での変死体発見の真実を桑原崇が解決するといった内容。そこに伝説の陰陽師阿倍晴明伝説の隠された真実が絡んできます。

 両方のナゾに関する共通のキーワードはずばり「式神」。TVや映画などで妖怪みたいな存在で扱われる式神の正体に関する崇の考察は非常に面白いです。少なくともこういった方面の知識が薄い僕でも、かなり説得力を感じました。
 シリーズの他の作品が時として煙に巻かれたような感じになってしまうのにくらべると、シャープで分かり易いし、その正体が現代の事件の解決にもピタッとはまったときの感覚はヤラレタと思いました。

 シリーズ物なので出来れば順番に読んでいった方がいいのですが、単体で読んでも差し支えないので、とりあえずの入門編としてはいいと思いますよ。

(2006.2.15 ブログ再録)