『奇跡島の不思議』(☆3.7) 著者:二階堂黎人

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孤島、"奇跡島"。昭和初期、名家の娘の手により享楽の館が築かれたが、彼女の不可解な死以来封印されてきた魔島。そこに眠る膨大な美術品を鑑定するために島を訪れた美大の芸術サークル。彼らを出迎えたのは凄惨な連続殺人だった。脱出不可能のパニックのなか、メンバーは自ら犯人を探し始める…。これぞ、本格推理小説!著者が全霊を込めて取り組んだ"フーダニット(犯人探し)"。厳密な論理と巧妙な道具立てで読者に挑戦する意欲作。


Amazon紹介より
 

ある意味、二階堂さんの作品の中でも一番趣味的に好きな作品かも。
ちょっと麻耶さんを彷彿とさせる、孤島に立てられた異形の建物、非人間的な女性の呪縛から逃れられない登場人物たち、美しくも残酷な死体の数々・・・うーん、乱歩と横溝に影響され、島田によって目覚めた僕にとっては、すごーくつぼ。

なにより、事件に大きな影響を与えているヒロインの造詣が秀逸。だって、顔が完全なる対称形なんですよ。顔の左側と右側がまったく同じつくりなんて、あまりに妖しすぎてゾクゾクしちゃいますよ。
また、登場人物たちも基本的に普通なんだけど、どこか微妙に狂ってる感が小説全体の雰囲気にマッチしてて、読み進めてくうちに狂気の境目がわからなくなってしまいます。

事件の動機は・・・うーん、まあ歪んでるよね、これは。でも、この歪み具合がまたちょっと好みだったりするんですよね、これって。
なぜこの犯罪を犯さなければならなかったのか、っていう部分がもはや理屈じゃなく当然という感覚、この部分の説得力の持たせ方は、この小説においてはそれなりに成功してるんじゃないかなあ~。

小説全体としては、二階堂さんらしく目新しさは正直少ないっす。トリックもあんまり印象に残らないし、オリジナリティは感じません。まあ、あの凶器(?)はある意味すごいですけど、泡坂さんの小説で前例があるしね~。

風来坊の正体は、まあわかる人にはすぐわかるし、完全にファンサービスな気もしますが、十分読み応えはあると思います。

(2005.12.21 ブログ再録)