『靴に棲む老婆』(『生者と死者と』改題)(☆3.5) 著者:エラリー・クイーン

 

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靴作りで巨億の財をなして《靴の家》に住む、老婆と六人の子供たち。 この一家に時代錯誤な決闘騒ぎが勃発、エラリーらの策も虚しく、不可解な殺人劇へと発展する。 ”むかし、ばあさんおったとさ、靴のお家に住んでいた”─マザー・グースの童謡そのままに展開する異様な物語。 狡猾な犯人の正体は? ナンセンスな着想と精妙な論理が輝く、風変わりな名作! (「生者と死者と」改題)

Amazon紹介より

 

 MY BESTでも触れてますが、この小説には一方ならぬ思い出があります。クイーンとの出会いはあかね書房かなんかの『エジプト十字架の秘密』とこの小説がほぼ同時だったんですが、小学校の図書室にあったこの本、ラストの犯人の正体が分かる場面がごっそり抜け落ちてるという悲劇が・・・。
 おかげで犯人わからず、しかもタイトルが『14ピストルの謎』なんてオリジナルタイトルからはかけ離れたものだったので、大人になって探すのに苦労しました。

 で、感想はというと面白かったなあ~。海外ではおなじみのマザーグースの童謡をモチーフにした怪しい雰囲気の中で起きる連続殺人(ちなみに僕とマザーグースの出会いは『僧正殺人事件』でした)という、横溝の『悪魔の手毬歌』や『獄門島』といった見立て殺人が結構好きな僕としては、見立てではないもののこういう小説はもろツボなんですね。

 しかも、この小説に出てくる登場人物達のいっちゃってるぶりはもうたまりません(笑)。とにかく今これをやったら遺伝子の研究家とかから大ブーイングをおこされそうなぐらい偏ってます。まあ、この小説にでてくる婆さんは『Yの悲劇』のあの婆さんを彷彿させて、なぜか微笑ましい気分になっちゃいましたが。

 犯人そのものは結構想像つくような気もしますが、たくさんの銃が存在するなかで凶器のピストルを巡るエラリイの推理の切れは相変わらずです。しかも、クイーンの中では結構明るめというか、推理とエンタメがいい感じにバランスが取れててすごく読みやすいです。

 クイーンを初めて読む人になにがいい?って聞かれたら、もしかしたらこの小説をあげるかもしれないですね~。それぐらい好きですね。


(2005.12.7 ブログ再録)