『出雲伝説7/8の殺人』(☆3.3) 著者:島田荘司

https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/5128FOHtE1L._AC_US400_FMwebp_QL65_.jpg


山陰地方を走る6つのローカル線と大阪駅に、流れ着いた女性のバラバラ死体!なぜか首はついに発見されなかった。捜査の結果、殺された女は死亡推定時刻に「出雲1号」に乗車していたらしい。休暇で故郷に帰っていた捜査一課の吉敷竹史は、偶然にもこの狂気の犯罪の渦中に…。好評、本格トラベル・ミステリーの力作

Amazon紹介より

 

この小説も一般のトラベルミステリにはありえないオープニング、さすが島田さんです。
いきなり山陰地方&大阪のいろんな駅でバラバラ死体の一部が発見され、しかも頭部だけ見つからない。うーん、この頃は御手洗シリーズも吉敷シリーズも同じようなノリですよね。

トラベルミステリーといえば、やっぱり時刻表を使ったアリバイトリック。この本でもやっぱり存在します。この時刻表トリックというのはなかなかの曲者ですね。だって絶対解ける、というか警察の力を一番発揮できるのがこのタイプのアリバイ崩しだと思うし(人海戦術ですべての可能性を潰していったら間違いなく見つかると思うのです)、なによりアリバイが崩れるパターンは基本的に同じですからね~。

そういう意味でこの小説の一味違うところは、この時刻表トリックが犯人のアリバイを成立させる為のものだけではなく、同時に死体をばら撒く為に利用されてるって所ですかね。本来逮捕させる危険性を防ぐために死体は隠したいところを、犯人はあえて目立つ処理の仕方をします。この問題が犯人の動機ときっちと絡み合ってるところは、トラベルミステリーを読みなれた人にも、新鮮に写るんじゃないかと思いますね。

それにしても、事件の最後に吉敷が仕掛ける罠はな~。まあ犯人が引っかかる為の伏線は張ってるにしろ、それでもどこか納得いかんぞ~。



(2005.12.5 ブログ再録)