たいりょうのちょっと一息

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『魔王』(☆3.0) 著者:伊坂幸太郎

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「小説の力」を証明する興奮と感動の新文学 不思議な力を身につけた男が大衆を扇動する政治家と対決する「魔王」と、静謐な感動をよぶ「呼吸」。別々の作品ながら対をなし、新しい文学世界を創造した傑作!

Amazon紹介より

 

はじめに断っておくと、これはミステリじゃないですよね。元々伊坂さんの作品はいわゆる広義的な意味でミステリと捉える事はできても、決して本格ではないですね。
もちろん、伊坂さんの作品は十分粒揃いの作品がそろってるので、そんな事関係無く読めますが。

この作品は2部構成です。第1部は人の心に同調して自由に言葉を喋らせる事の出来る青年の視点で、ファシズム的危険性を孕みつつもその演説力で政界を上りつめようとする政治家との対決(?)が描かれています。読み始めて、なるほどこの2人の対決の物語なんだと思ってたら、第2部ではいきなり物語が5年後に飛び、一人の女性の視点から、第1部の主人公の弟に関する話になります。

伊坂さんが描くファシズム思想ってどんなんやろ、と思って読んだんですが、最後まで読んで、ああ物語の主題はここではないんだなと気付きました。っていうか後書きで著者自身そう語ってるんですけどね
むしろ人と人との関係性と自立性みたいな感じの小説、って感じました。
そういう意味では、ああこれも伊坂WORLDなんやなと。

ただ、残り数ページでタイトルの真の意味が分かるというか、今までの想像してきたものががらっと崩れる感覚には参りました。
決して大どんでん返しってわけじゃないんですし、世界が一変するってもんじゃないんですけど、うーんちょっとやられたなあ。

他の作品に比べると登場人物も地味だし、物語自体もあっさりしてるんで、かならずしもテンポ良く読めるってわけじゃないですが、分量の少なさもあいまって手軽に読める作品だと思います。

(2005.12.1 ブログ再録)