『白昼の死角』(☆4.0) 著者:高木彬光

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妻や愛人の抗議の自殺、やくざの恐喝にも動ぜず天才詐欺師鶴岡七郎は、ついに警察の追及の手から逃げおおせた! 法の盲点と死角を見すえて、現代法支配の限界に挑んだ最高傑作長編推理

Amazon紹介より

 

三島由紀夫も扱った「光クラブ」事件を背景にすえた、社会派小説。ジャンルとしてはピカレスク小説に近いのかな。
自作の方向性に苦悩してた高木氏にとって、社会派転向のターニングポイントにもなった小説ですね。

光クラブ」をモデルにした太陽クラブの代表隅田の自殺後、経営を受け継いだ鶴岡七郎の手腕はとにかく豪腕の一言。現代でこの手法が通じるかというとはなはだ疑問ですが、巨額詐欺方法の根底にある人間心理の盲点をついたやりとりは現代におけるあまたの詐欺手法と相通ずるところが感じられますね。作中、松本清張の「眼の壁」(タイトルあってるかな?未読です)の手腕を児戯扱いする傲慢さも、鶴岡の頭の良さがあってこそ、説得力を感じます。

とにかく、主人公鶴岡の魅力がこの作品の1番の見所。そのまわりを囲む登場人物達、被害者なり共犯者なりに対する自信に満ち溢れた態度と発想力は、ある意味企業人の指南書としても通じるのか?
人間心理の網を見事に掻い潜っていった鶴岡の手法が、その人間心理を読み切れなった為に破綻をきたしてしまう構成も非常に面白かったです。

鶴岡がいったいどこにむかうのか、最後にはなにが待っているのか。
今読んでも一級の小説です。いま本屋で入手可能なのかはわかりませんが、見かけたら買ってそんはありません。


(2005.11.25 ブログ再録)