『摩天楼の怪人』(☆3.0) 著者:島田荘司

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ニューヨーク、マンハッタン。高層アパートの一室で、死の床にある大女優が半世紀近く前の殺人を告白した。事件現場は一階、その時彼女は34階の自室にいて、アリバイは完璧だったというのに…。この不可能犯罪の真相は?彼女の言うファントムとは誰なのか?建築家の不可解な死、時計塔の凄惨な殺人、相次いだ女たちの自殺。若き御手洗潔が摩天楼の壮大な謎を華麗に解く。

Amazon紹介より

 

最近の御手洗シリーズがあまり好きじゃなかった僕ですが、やっぱり新刊が出ちゃうと買うんですよね~。
今回は久々(?)のハードカバーのような。CGで描かれた摩天楼のカラー絵も挿入されてます。

「ミステリーズ」に連載してたときはまったく読んでなかったのですが、ちらちらと「暗闇坂」の頃の風味に戻ってるのかな~と、ちょい期待しつつ読みました。

冒頭からブロードウェイの大女優が死を目前にして、過去の殺人とそれにまつわる不思議な事象をかたります。
この辺はもうお約束みたいなノリですが、最近の童話風味に比べると結構陰惨。時計塔の殺人のあたりは、乱歩なんかでおなじみのシーンの再現になってます。

前半は、過去と現実が交互(でもないですが)に描かれ、御手洗がひとつの謎に解決をつけていきます・・・
が、肝心のトリックがなんだかなあ~。確かに論理的帰結といえばそうなんですが、うーん超能力者じゃないとこんなん想像出来ないんじゃあ。
作者は、後書きでミスディレクションについて言及してますが、そんな問題じゃないじゃ・・・。
犯人がなぜそこにいなければならなかったかという、物理的理由にもなんだか腑におちない点が残りました。

かつて、綾辻行人さんが島田氏との対談について、「幻想的謎と論理的解決」があれば本格としておもしろいという点について異議を唱えていたような気がしますが、これを読む限り綾辻さんに軍配があるような気がしますね。
まあ島田作品らしいといえばらしいのですが。

題名に関する言及も、読んでてまったく気にならなくなったし・・・。
読者と作者の始点がずれ始めてる印象が残り、なんだかだんだん後期の乱歩のポジションに近くなってきてるような。

前半は十分におもしろかっただけに、腰砕けの後半が残念!!

(2005.11.14 ブログ再録)