『密閉教室』 著者:法月綸太郎

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教室にあるべきはずの48の机と椅子がすべて消え、代りにコピイされた遺書と級友の死体だけが残されていた。しかも教室はガムテープで周到に目張りされ、密室と化していたのだ。 ――受験校3年の工藤順也は熱狂的な探偵小説の愛好家だ。自殺か他殺か。彼が動くにつれ事件は昏迷度を深め、ついに彼が辿りついた苦い真実とは……。本格ミステリと青春小説の美しくも哀切なキメラ。
Amazon紹介より
 

なんだか、綾辻さんや我孫子さんに比べるとあまり見かけない法月綸太郎。でも、僕としては初代(?)京大推理研3羽ガラスの中では一番好きだったりします。やっぱり、ロジックと苦悩を追及する姿勢がクイーンファンとしてはたまらないのです。

で、そんな法月さんのデビュー作です。

いやあ、若いな~(笑)。異常な数の章からなる青春ミステリー。でも、そこで繰り広げらる会話や人間関係は、爽やかさも懐かしさもありません。デビュー作から後の法月さんの苦悩を予感させるような息苦しい小説になってます。

とにかく、こけおどしな密室トリックはどうなんだとは思いますが、やりたいことを全て注ぎ込んだ感じは、歌野さんのデビュー作と重なるなあ。悪筆なのも同じだし(笑)。

でも、なんですかね。多分この息苦しさが、自分の高校時代とダブるんですよ。やりたいことと現実のギャップに悩んで、あげく退学届まで出したあの頃熱さが、僕には懐かしく感じました。
評価が低いのは分かります。でも、のちの変貌を考えるとやっぱり今のミステリ界には必要な人だと思うんです。