『密告』(☆2.5)  著者:真保裕一

https://m.media-amazon.com/images/I/41QJ08JVFML._AC_UL872_FMwebp_QL65_.jpg

川崎中央署生活安全総務係の萱野は、ある日、上司の矢木沢に面罵された。競技射撃で五輪出場権を懸けて争った選手時代の確執から、矢木沢の接待疑惑を密告したと思われたのだ。自らの汚名を晴らすため、萱野は真の密告者を捜す!巨大な日本の警察組織内部に潜む闇を、深く綿密に描き切った迫真のサスペンス。
                              
Amazon紹介より
 

真保さんといえば、テーマへの緻密な取材とそれを生かした綿密な構成、さらに壮大なエンターテイメント性が面白さの根幹にあると思います。
その部分が上手くいったのが『奪取』や『ホワイトアウト』だと思います。

で、この作品はというと、その前者の部分に後者が飲み込まれてしまってるかな~。
相変わらず冒頭のネタ振りと、その部分に関する情報の提示は相変わらずきっちりしてるんですが、それがあまりにも細かいせいか、なんだか興味の無いノンフィクションを読まされているような、正直ちょっと中盤が読んでてきつかったですね。
後半、物語も一気に動きだすんですが、なんだか前半の勢いの無さが響いてるのか、あまり面白みが感じられませんでした。

こういう作品を読むと、必ずしも正しい取材の描写が作品の良さに繋がる訳ではないと思いますね。
よく書評などで、描写が間違ってる(例:半落ち)とか現実にはありえない、という理由で作品に不当な評価を下す識者がいらっしゃいますが、小説の中でそれがきちんと成立して面白さにつながっていれば、それでいいと思うんですけどね。

採点です。

プロット   3 
(きちんとした取材力は伝わりますが、ちょっと魅力が薄いかな)
ストーリー 2.5
(完全にテーマに振り回されて、読み物としての面白さは少ないかな)
キャラ    2.5(
どのキャラにも面白みがないなあ~。)

総合    2.5