『『青春デンデケデケデケ』 監督:大林宣彦

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60年代を背景に、ベンチャーズに影響を受けた高校生たちの姿をノスタルジックに描いた青春ドラマ。監督は『ふたり』の大林宣彦、原作は芦原すなお直木賞受賞作。
                              
Amazon紹介より
 

 一般的に大林作品を薦めるとなると、この作品になるのではないでしょうか。
それぐらい、大林独特のクセの部分が気にならず、映画としてのクオリティが高い作品です。

 その理由としては、やはり原作の力を見逃せないのでしょう。
 芦原すなおさんの原作もまた一級の青春小説であり、大林さんのノスタルジックなセンスがいい意味で融合してます。

 大林さんの映画の特徴の一つとして、極端に短いカットを積み重ねるという手法が挙げられますが、バンドストーリでもある本作において、そのリズムはぴったりと嵌っています。バンドを組んだ主人公たちが、練習場所を転々と変えていくシークエンスは、繰り返しの心地良さが音楽的手法と密接に絡み、短い時間で彼らの置かれている現状をきっちり観客に伝えます。
 映像作家としてその独自のスタイルが語られがちな大林さんが、普遍的な物をやらせても職人芸を持っている事がよく分かる部分ですね。

 その一方で、大林さん独自の演出法も健在です。
 冒頭の海のシーン。夢の中のお話とはいえ、てらいもなく原作をそのまま忠実に表現してしまうあたりはまさに大林映画。特に象徴的なのが、主人公の女友達が八百屋お七に例えられる場面では、いきなり八百屋の前に火の見櫓が出来てしまう所。不思議な事に、それが違和感ありません。これは物語のベースが高校生たちの夢物語として、この映画がキチンと積み重ねられているからこそですが、大林さん以外の監督だったらこんな事しないよな(笑)。

 しかし、夢には終わりがあります。
 映画の終盤、画質の変化と共に、彼らの夢は過去の存在となってしまいます。ここには、振り返ると懐かしい、けれども決してそこには戻ることが出来ない喪失感、という大林映画によく見ることが出来るモチーフがあります。青春時代が熱ければ熱いほど、その喪失感は大きくなります。
 映画はそこで終わりますが、その喪失感こそが少年が大人になる通過儀礼である。そんな大林さんのメッセージが込められている気がします。

 とにかく90年代の青春映画を代表する1作である事は間違いない、大林さんの代表作の1本だと思います。

 

(2005.10.10 ブログ再録)