『Zの悲劇』 著者:エラリー・クイーン

https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/511CFN910NL._AC_US400_FMwebp_QL65_.jpg

 
政界のボスとして著名な上院議員の、まだ生温かい死体には、ナイフが柄まで刺さっていた。被害者のまわりには多くの政敵と怪しげな人物がひしめき、所有物の中から出てきた一通の手紙には、恐ろしい脅迫の言葉と、謎のZの文字が並べてあった。錯綜した二つの事件の渦中にとび込むのは、サム警部の美しい娘のパティと、レーンの名コンビ。
                               Amazon紹介より
 

 いきなり『Zの悲劇』です。

 ドルリー・レーン4部作の中でも、最も評価の低いこの作品。ちまたで言われる通り、『Xの悲劇』『Yの悲劇』に比べると、ちょっと作風そのものが違いますね。
このあたりは、やっぱり国名シリーズ用に用意されたプロットを、『レーン最後の事件』の前フリのために、ペーシェス・サムを出さなければならなくて、こちらのシリーズに転用した影響だと思います。

 確かに、ペーシェスは女版エラリイ、それも初期の頃のファイロ・ヴァンスに近い頃のような印象を受けました。それにしても、レーンがよぼよぼになって登場したのにはびっくりしましたが。

 同時に、国名シリーズから転用しただけあって、解決までのロジックの組み立てはある意味4部作の中では一番クイーンに近いかもしれないですね。特にラストの刑務所のシーンで、消去法推理により容疑者の可能性を一人づつ消していき、最後の一人を指名するくだりは、圧巻の一言です。

 シリーズ通して読んで考えた場合、確かにペーシェスが登場する以外は、トータルの影響が少ない作品だと思います。
と、同時にレーン4部作として発表されたが為に、不当な評価をもらってる気もするのです。
 国名シリーズで出てたらもっと人気でると思うんだけどなあ~♪