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『叙述トリック短編集』(☆2.6) 著者:似鳥鶏

 

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注意! この短編集はすべての短編に叙述トリックが含まれています。騙されないよう、気をつけてお読みください。

 

本格ミステリ界の旗手が仕掛ける前代未聞の読者への挑戦状!

 

よく「叙述トリックはアンフェアだ」と言われてしまいます。これが叙述トリックというものの泣きどころです。

では、アンフェアにならずに叙述トリックを書く方法はないのでしょうか?

答えはノーです。最初に「この短編集はすべての話に叙述トリックが入っています」と断る。そうすれば皆、注意して読みますし、後出しではなくなります。

問題は「それで本当に読者を騙せるのか?」という点です。最初に「叙述トリックが入っています」と断ってしまったら、それ自体がすでに大胆なネタバレであり、読者は簡単に真相を見抜いてしまうのではないでしょうか?

そこに挑戦したのが本書です。果たして、この挑戦は無謀なのでしょうか? そうでもないのでしょうか?その答えは、皆様が本書の事件を解き明かせるかどうか、で決まります。

(「読者への挑戦状」より一部抜粋)

 

 

 これが初の似鳥さん。それだけ最近本が読めてないんだよね、と実感。
 最初から叙述トリックを宣言するというのは、なかなかに大胆不敵な企画。さらに冒頭の「読者への挑戦状」では各短編へのヒントまで掲載されているという、まさに挑戦状の極み。こちらのハードルの感覚としては、宣言してなくても叙述トリック使ってるだろとわかって読む折原一さんの小説と同じモード。

 さて、読みおわった感想はうーん・・・というのが正直なところ。けっして出来が悪いわけではない、叙述のテキストとしてはいいと思うのだけれど、それが明らかになった時の驚きが短編そのもののカタルシスに必ずしも直結していないというか、叙述だけが浮き上がってしまってるかなと。

 

 もちろん、クリスティのあれやら横溝のあれやらのような驚きを求めるのはハードルが高いとは思いますが、なにかこう叙述部分で驚きが欲しかった。冒頭のヒントもあったせいか、ほとんどの短編でおおよそ想像がついてしまったからなのかなぁ。
 作品全体を通した仕掛けも途中の段階で分かったしな、これが叙述なのかというのが気になる部分もありました。

 逆に叙述部分以外に目を向けると、「背中合わせの恋人」(個人的には一番良かった)の恋愛要素や、「貧乏荘の怪事件」の多国籍な会話、「ニッポンを背負うこけし」で登場するこけしの存在感だったり面白いなと思うところは多かったです。

 

 そう思うと、あくまで私個人の感想ですが叙述トリック縛りにしたのが逆に魅力に繋がらなかった。そういう意味では縛りのない作者の作品を読んでみたいとは思いましたね。