ジョゼと虎と魚たち 監督:犬童一心

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大学生の恒夫は、乳母車に乗って祖母と散歩するのが日課の自称・ジョゼこと、くみ子と知り合う。くみ子は足が悪いというハンディキャップを背負っていたが、自分の世界を持つユーモラスで知的な女の子だった。そんな彼女に恒夫はどんどん引かれていき、くみ子も心を許すが、ふたりの関係は永遠ではなかった。
 

 2004年の邦画界は妻夫木聡の当たり年だったような気がする。といっても、この作品と、『さよなら、クロ』しか見てないのですが・・・。とにかく『ウォーターボーイズ』以降、普通の青年を演じさせると、この世代あたりではNO.1ではないかなあ。

 この作品でもそんな妻夫木の魅力が存分に発揮されてます。
冒頭のアルバイトシーンからジョゼとの出会い、そして同棲といった過程において若干説明不足気味な脚本に説得力を持たせています。そしてジョゼ演じる池脇千鶴も今までの役とは少し違う下半身不随で社会に対して斜に構えた少女(?)を見事に演じています。
 とにかく、この二人の演技を見るだけでも入場料の元は取れると思うし、映画の面白みの80%ぐらいがここにあると思います。

 

 さて肝心の内容ですが、結論からいうと非常に素晴らしい作品に仕上がっていると思いました。
 普通の青年と障害者という、1歩間違えるとお涙頂戴ものか、ヒステリックになりがちなラブストーリを、実にシンプルに描いて素直に入り込めます。
 その要因はやはり登場人物の造詣だと思います。役者評とかぶるのですが、主人公の青年が決してスーパーマンではなく普通に悩んだり喜んだりするし(この辺りの妻夫木の表情は素晴らしいです)、ジョゼもすごく情熱的な心を持ちながらも、一方できちんと現実と向き合える部分を内包しており(これが無いと『東京ラブストーリー』(原作)の赤名リカぐらい非現実的になってしまうでしょう)、一つ一つの思考や行動にある程度の説得力を持たせることに成功しています。

 またカメラワークも決して押し付けがましくなく、1歩引いたスタンスの構図と暖かい色彩のバランスが、ファンタジックになりがちなシーンでも現実的なトコロまで落とし込むところに成功しています。

 なによりもこのタイプの映画(というか恋愛映画系)は終わらせ方が難しいと思っているのですが、主人公が選んだ選択の是非はともかく、ほぼ大体の観客が納得できるのではないかなあと感じました。特にラストカットからエンドロールへの入り方は個人的には最近見た映画では一番気持ちよかった。

 ただラストシーンのあるカットは少し不満が残りました。

 とにかく決して高い予算が組まれてる映画ではないですが、作り手の気持ちが良く伝わってくるいい作品(個人的には2004年公開映画BEST3には入る)だと思うので、とにかく見るべし!!