邦画『花とアリス』 監督:岩井俊二

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岩井俊二監督が、高校生たちの揺れ動く心情をリリカルで繊細なタッチでつづった青春ドラマ。ネットで配信した4つの短編が、長編作品として再構成された。あこがれの先輩を「記憶喪失」だと信じこませ、つき合い始める花と、彼女の親友アリス。3人の微妙な思いがもつれていく。 amazon紹介より

 

 ネット配信による全4回(だと思う)の短編映画を長編に作り直し公開された作品で、今回はDVDを購入して鑑賞、ネット版も特典でついてました。

 さて作品はというと、主人公の花が偶然頭をぶつけて転倒した憧れの先輩に対し、記憶喪失の症状をでっちあげ、自分と交際してるという嘘の既成事実を作り上げ、そこに花の親友であるアリス(ありすがわという苗字)が絡んでドタバタを繰り返すいった内容です。

 感想はというと、まあ岩井俊二!!って感じの映画ですね~。
 『love letter』や『打ち上げ花火~』で描かれたような、一種少女マンガ的な物語で、こういうのを撮らせたら、この監督はそつなくこなしますね。
 しかしこの2作との微妙な違いを感じたのは、前2作は、どちらかというと主人公が傍観者的な要素が強く、カメラ・ワークや照明による空気感の構築により主人公のあるべき場所の記憶を構築していたとおもうのですが、今作はそれに加え花とアリスの二人のヒロインの会話によって物語を浮かび上がらせていると思います。
 そういった意味では、『リリィ・シュシュのすべて』における、インターネットを利用した多人数的創作方法によりストーリーや会話を生み出した手法に近いのかもしれません。

 ひとついえるのはこの映画は 鈴木杏 というこの世代では突出した演技力の持ち主と、 蒼井優 というナチュラルな映画的空気を持った、この2人の女優の存在がなくては成立しなかったのではないかなと思います。
 それは特典に収録された短編バージョンが、本編より短いにもかかわらず2人のアドリブ的な会話がより長く編集されている部分からも感じます。おそらく映画版より制約が少なかったであろう短編バージョンの方が、この物語の本質を持っているような気がしますし、二人の掛け合いに思わずニヤッとしてしまう部分も多いです。
 ただし、その分本編に比べ若干メリハリはない感じはしますし、長編の方が完成度は高いと思いますが。

 最後にこの映画がお勧めできるかというと、悩みます(笑)。確かに映画としてはよくまとまってる思いますが、多分岩井監督の少女漫画エッセンスが苦手な人は辛いかも・・・。心に残る作品かといわれれば、『love letter』や『打ち上げ花火~』に劣るし。ただし見るなら出来れば両方を見比べて下さい。