邦画『ローレライ』 監督:樋口真嗣

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福井晴敏のベストセラー小説『終戦のローレライ』を原作に、平成ガメラ・シリーズなどの特技監督として知られる樋口真嗣が長編実写映画監督デビューしてお届けする海洋冒険スペクタクル大作。1945年8月、絹見少佐(役所広司)は浅倉大佐(堤真一)の密命を受け、広島に続く本土への原爆投下を阻止すべく、ローレライ・システムなる新型特殊兵器が搭載された伊号五〇七潜水艦に乗り込み、太平洋に向けて出航するが……。
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 実は密かに期待してた『ローレライ』です。この映画、祖父の死去を聞く1週間程前に見ました。CMでも言ってますが、第三の原爆が東京に落ちるのを阻止する、というのがメインストーリー。ちなみに祖父は長崎で原爆に合い、その後広島で生涯を送ったという、原爆とは切っても切れない縁を持っていました。閑話休題

 

 この映画、福井敏晴の原作の映画化と思われがちですが、実はちょっと違います。作者の前作『亡国のイージス』(むちゃくちゃおもしろいです。)に感動した樋口監督が映画化を前提に執筆を依頼、小説のプロットが完成した段階で、小説とは別に映画用の脚本が書かれたというわりと珍しい形態なのです。だから巷で言われている、出てこない登場人物の存在に対する批判なんかは実はちょっと的外れなのかもしれません。

 で、感想はというと、個人的には結構楽しめました。たしかに海上に浮かぶ潜水艦を俯瞰で撮った画のCGの異様なちゃちさ(昔の特撮の書き割りみたいです。)と潜水艦内部の緻密さ(艦の広さはともかく)のギャップは気になるし、アニメチックなのも、監督の出自がアニメ方面からなので仕方ないのかなあとはいえ、やっぱり首をひねりたくなる気分になります。

 そしてストーリーも、展開が速すぎて一人一人の感情の移り変わりが良くわかんないのも事実。特に乗員唯一の女性であり、「ローレライ・システム」の鍵を握る香椎由宇演じるパウラが後半になればなるほど、存在感が薄くなっていくのは、映画的にもどうなのよ?堤真一の主張に至ってはもはや・・・。

 では、何がいいかというと役者です。妻夫木君はハマリ役だし、柳葉敏郎も暑苦しい演技がいい方向へ。何よりも役所広司が説得力に欠けるストーリーに、強引に説得力を持たしてくれてます。監督さん、感謝ですね。あと、ピエール瀧が結構がんばってます。いいですよ。
 まあ、細かい粗はたくさんあるし、原作の方がはっきりいって面白い。でもこんなおばかな、一種ハリウッドチックな映画があってもいいと思うのです。