目撃情報の信憑性

さてさて、推理小説のほとんどには殺人が登場しますよね。殺人が起こるということは発見者がいます。
警察小説なんかだと、そこに犯人の目撃情報とがあるわけで、その風貌とかが語られます。
例えば、中肉中背、20代後半、黒のジャンバーにジーンズなどなど・・・

で、こういった証言というのはどこまで信用できるのでしょう?
警察の鑑識とか、似顔絵の専門家とかだと、もしかしたら目撃者との会話をしながら上手く正しい情報を引き出せるのかもしれませんが、探偵の多くはそういう経験は無いと思います。
例えば、20代後半という証言があったとしても、その認識は人によって違うわけで、最近はとくに年齢を見極めるのが難しくなってるし、一般の人がぱっと見て大よその年齢を図るのは、結構無茶なんじゃないかと・・・。
しかも、たとえば犯行直後に犯人を見かけた人なんかは、興奮orパニックで、正しい認識をできるかというと、はなはだ疑問なのです。

なんでこんな事を思うかというと、実は今年の春に似たような経験をしたからです。
出勤途中、会社の最寄の駅を降りたところで、トイレに寄りました。大きい方をしようと思い、個室を覗きましたが、あいにく満室。しばらくドアの前で待っていたのですが、一向に開く気配がないので、トイレの出口に向かいました。出口に差し掛かったところで個室のドアを開く音が聞こえ、男性が早足で僕を追い抜いていきました。その後ろ姿を見ながら、水を流す音もしなかったので変だなあと思いつつ、個室にUターンしたところ、個室の中では雑誌らしきもの(あとで警察に新聞だと教えられましたが)が燃えていました。

そう、放火の第一発見者になったのです。運良く発見が早かったので、地下鉄職員の消火活動によりボヤ程度で済んだのですが、とりあえず第1発見者という事で消防士の人に、発見の経緯と犯人の服装(顔は横顔をちらっと見ただけなのでたいした証言はできませんでした)、連絡先を伝え、とりあえず会社に出勤。

その日の夕方、携帯に所轄の警察から電話が。地下鉄の防犯カメラの映像で犯人の特定に協力してほしいとの事。
めったに無い経験なので、わくわくしつつ警察へ。そこで私服の刑事さんに囲まれながら、カメラの映像を確認。
愕然としましたよ。人の出入りの順番から、犯人は簡単に特定できたのですが、その服装は僕の証言したものと、まったく違ってました。

突然の出来事に襲われたときの人の記憶なんてあてにならないもんなんだなあ~、と改めて思いました。
ということは、ミステリにおける証言なんて、ほんとは疑ってかからなきゃいけないんじゃ・・・。
なんだか、警察や探偵の元に入る情報がしばらく信じられなくなりましたよ。

でも、そういう見方をしたらほとんどの小説は楽しめないですよね。
やっぱり小説は小説、やさしいんだなあと思いましたよ。