『魔術王事件』 著者:二階堂黎人

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笑う黄金仮面《魔術王》vs.美貌の名探偵《二階堂蘭子》
呪われし血筋と宝石を巡る、数奇な殺人事件の結末は!?
時は昭和40年代、所は北海道・函館。呪われた家宝として、名家・宝生家に伝わる《炎の目》《白い牙》《黒の心》。この妖美な宝石の奪略を目論み、宝生家の人間たちを執拗なまでに恐怖へと引き摺り込む、世紀の大犯罪者《魔術王》。密室殺人、死体消失、大量猟奇殺人……。名探偵・二階堂蘭子が、冷静沈着かつ美的な推理で偽りの黄金仮面に隠された真犯人に挑む!
amazon紹介より

 二階堂黎人が生み出した女探偵二階堂蘭子が、北海道の旧家の人々を巡る惨劇に立ち向かうシリーズ最新作。
長編は『人狼城の恐怖』以来のご無沙汰となります。
今回の相手は「魔術王」を名乗る正体不明の怪人物。そこには蘭子の宿敵ともいえる魔王ラビリンスの影が・・・

 のっけから乱歩か正史か、というような不可解な殺人事件の解決依頼が蘭子の元に届きます。依頼者の話を聞いた蘭子はすぐさま事件の謎を解き明かします(ちなみにこのトリックは非常に分かりやすいので、挑戦してみてはどうでしょう)。
この事件をきっかけに北海道のある名家に伝わる3つの宝石を巡る殺人事件に発展するのですが・・・

 今回、実は蘭子はほとんど登場しません。
なぜならラビリンスに関わる別の事件の調査で、九州に捜査に向かった為北海道に赴く事が出来なかったからです。(実は他にも理由があるのですが。)
果たして蘭子は数少ない手掛かりと情報から犯人を追い詰めることができるのか。

 さて感想ですが、今回の事件はある程度犯人の目星は限られていきます。
じっくり読んでいけば、消去法的に容疑者を絞っていけるのです。このあたりは、推理小説として良い事でしょう。ちなみに僕は最後の最後で外しました。

 もともとこの人の作品は犯人・トリック当ての部分では比較的分かりやすいです(但し人狼城は別。すごすぎて半分もわからん)。
むしろ、正史を彷彿とさせる旧家を巡る因縁や確執、そしてオカルト的要素といったバックボーンの凄みに本質があると思うのですが、今作はラビリンスが関わってくるという事もあってか、その部分が薄れてしまっているような気がして、読み易いが少し物足りないといった印象です。

 しかし、次回作以降への含みという部分では期待できるのではないでしょうか。

ストーリー  3.0(前半の雰囲気はいいです。後半かなり失速ぎみ。)
プロット  3.0(よくも悪くも普通。犯人が結構分かるんでね~)
トリック  2.5(どこかで見たようなトリック。印象には残りません)

総合  3.0