モーターサイクルダイアリーズ 監督:ウォルター・サレス

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後に親しみをこめて“チェ”と呼ばれ、今もなお世界中から愛されている革命家ゲバラ
まだ名もなき医学生だった頃の友との南米大陸縦断の旅が彼の未来を変えた!
人間味と情熱あふれる革命家の息吹が芽生える瞬間が心の極限を揺さぶり涙を誘う、真実の物語。

amazon紹介より



のちに“チェ・ゲバラ”として世界的に有名になる23歳の医大生エルネストが、年上の親友アルベルトと共にバイクによる南米大陸横断に挑戦しながら、悩み成長し目的をみつけるといったお話。といっても決して革命の闘士の若き日の偉人伝というよりも、ロードームービー的な味わいの作品です。

主人公エルネストはどこにでもいる喘息持ちの青年であり、どこにでもいそうな存在。南米横断の旅も、最初は特に目的を持ったものではなく、気ままな放浪の旅でした。それが旅先々でいろいろなトラブルや出会いにより、人間として変貌を遂げて行く過程を、監督は虚実を織り交ぜながら非常に丁寧に描いていきます。そこにはのちのカリスマとなるような強さを最初から感じさせるものではなく、ただの一人の若者の存在があり、観客も派手さはないながら映画の世界に引き込まれていきます。

個人的にはこの映画には二つの境界線があると思いました。
ひとつは南米の各国をわける国境線であり、もうひとつは人が人であるための国境線。

前者が比較的サラッと展開していきます(まあ、ロードームービーで国境をこえる旅に苦労されても見るほうは困りますが)。

対照的に後者の境界線を越えるのに主人公は苦労します。それは旅立ちの前に彼女から受け取った15ドルの行方、ある銅山工場で出会ったインディオの夫婦との邂逅であり、その結実が映画のハイライトであるサン・パブロでの生活です。サン・パブロでの最後の夜に彼が見せた行動こそが、エルネストが人が人であろうとするための境界線を越えた瞬間であり、“チェ・ゲバラ”が誕生した瞬間です。
決して大傑作だというつもりもないですし、完璧な映画だとも思いませんが、見た人の心に何かが残る、印象深い作品でした。

最後に主役の二人の演技、エルネストを演じたガエル・ガルシア・ベルナルの生真面目さと優しさの漂う眼差しと、アルベルトを演じたロドリゴ・デ・ラ・セルナの人間臭さ溢れる行動は非常に素晴らしかったです。