災厄の町 著者:エラリー・クイーン


小学生の頃、クイーンの『エジプト十字架の謎』を読んで感動。
でも、エラリイより、ドルリー・レーンが好きだった。

最近、ロジックというものに興味が湧き、少しづつ再読を始める。

これはいわゆる、ライツヴィルというアメリカの田舎町(架空)を舞台にしたシリーズの1作目。一般に後期クイーンといわれる時代。

この町に住む資産家の娘の婚約相手が、突然失踪。それから数年後、その婚約者が突然帰郷、2人は結婚式を挙げる。幸せなはずの結婚生活。しかし、それは新郎が妹に書いた3通の手紙の出現により、少しずつ災厄の影が差し込み始める。それは、新婦の病気と、死亡の知らせの通知だった。
バカンスでこの地を訪れていたエラリイが、この事件に立ち向かう。

推理小説を読みなれている人には犯人が分かると思う。クイーンのロジックは、消去法的に可能性を探っていくと、一つの答えにたどり着く。この過程は良くできている。
しかし、ロジックの出来よりもそこから炙り出される犯行の動機が、あまりにも悲しい。そして、事件を解決する為に存在するはずの探偵が、ただ事件を語る為に存在してしまう。

後期エラリイシリーズの命題ともいえる、探偵の存在意義。
この作品ではまだかろうじて探偵である事を証明するエラリイ。
『フォックス家の殺人』『ダブル・ダブル』『十日間の不思議』と続くエラリイの魂の探求がここに始まる。